印刷や塗装の黒は、どのくらいの反射するのか?
光学設計者の皆様、そして無反射の黒が必要な看板業者、掲示物担当者の皆様こんにちは。
黒色超無反射シート「ファインシャット」を開発販売しております、光陽オリエントジャパンの鉄平です。
突然ですが皆さん、看板などに使用される塗装や印刷ってどのくらい黒いと思います?弊社では全反射率という指標で無反射の黒さというものを評価しておりますが、弊社の調査によると、看板に使用するような耐摩耗性のある黒塗装というのは全反射率3%~10%くらいあります。
全反射率3%~10%でも、一般的な用途としては立派な黒に見えますから、大抵の場合は問題ありません。…が、どうしても反射による白飛びを抑えたいという用途も存在します。
例えば掲示物のQRコード。一部でも反射によるテカリで欠けてしまうと、正確な情報を伝えることができません。
また、何らかの校正を行うためのターゲットマーカーなども、どんな照明環境であっても白飛び無くはっきり見える必要があります。
弊社の「ファインシャット」は安価なSPグレードでも可視光全反射率1.2%。塗装に比べて遥かに無反射かつ黒いです。そんなファインシャットを印刷や塗装の代わりにシールとして活用した改善事例を2つほどご紹介させて頂きます。実際の依頼を元に色々脚色しておりますので、あくまでご参考程度ということで。
二次元コード標識のテカリを解決!
本日の依頼人、なにやら浮かない顔をしている。
(画像はイメージです)
二次元コード標識をカメラで認識し、自動運転で機械が巡回するシステムを活用しているとのこと。二次元コードには動作指示が記載されているが、時々照明の反射により白飛びし、認識エラーとなってしまうらしい。
「分かりました、”ファインシャット”で解決しましょう!!」
実際の二次元コード標識をそのままお見せすることはできませんので、本ブログ用に印刷サービス大手のラク○ルでQRコードを印刷します。
素材は発泡パネルの光沢紙貼り合わせ仕様に、光沢防止と耐久性向上のためマットラミネートを追加します。
これで一般的な非光沢パネルの完成です。
ラク○ルってほんと便利~。
どんっ!
さて届きました、一般的な印刷による非光沢のパネルサンプルです。
ファインシャット有無の比較ができるよう、同じ図案を並べてあります。
これの何が問題かといいますと
この反射でございます。見事に白飛びしてしまい、QRコードとして認識できなくなっております。
原因はこちらの天井にあるLED照明ですね。
いまからこのパネルの右側をファインシャットで無反射仕様にしていきます。
まずは印刷版下のイラストレーター用ファイル(or DXF or ベクターデータ付きPDF)を変換し、レーザーカッターの加工データを作成します。
※これらのデータがない場合は、CADで加工データを作成する費用がかかりますので、ご依頼の際はご注意下さい。
今回は厚みを抑えるためにSP0.2と薄型両面テープの組み合わせを選定しました。厚みの合計は0.27mmとなります。
レーザーカット後の状態はこんな感じです。両面テープ台紙の透明PETを残しハーフカット目に切っているので、台紙で繋がっている状態です。
ここから必要な部分をシールとして貼っていきます。写真撮るのを忘れましたが、弊社では水貼りの手法でシールを貼っています。対象物とシールの粘着面を食器用洗剤を薄めた水で濡らし、粘着性を落として貼る手法です。
濡れている間は何度も貼り直しができますので、正しい位置にシールを配置し、乾燥させてしっかり接着させます。
どどんっ!
そうして出来たのがこちら。右側をファインシャットのシールで無反射処理しました。えっ?違いが分からないって?
傾けてみれば一目瞭然でしょう。これにて照明の反射をものともしない、無反射看板ができました。無反射処理部分は厚さが0.27mmありますが、斜めから見ても特に問題にならないと思います。
わかりやすいように動画も撮ってみました。
これにて二次元コード標識の反射問題は一件落着しました。ArUcoコードなど、ARマーカーの作成にも最適です。
これはパーツを切り出しての手貼りということで、おそらく±0.3くらいの公差が発生していると思いますが、カメラのキャリブレーションボードなど精度が必要とされる製品も別な工法で対応可能です。
弊社指定のパネル素材(白マットアクリルボードなど)にファインシャットを貼り合わせた後、レーザーでファインシャットの層のみカットし、不要部分を剥がします。
そうすればこのような精度ものも大丈夫。無反射パネルのワンストップサービスです。500mmを超えるものは加工できませんが、±0.15mmの加工精度となります。ぜひお問い合わせ下さい。
で、こんな無反射のパネルがなんの役に立つのって?
弊社でARオブジェクトを作って撮影してみました。左が通常印刷、右側が弊社無反射パネルです。左側は光源によってマーカーにテカリが発生するたびに、CGオブジェクトが消失してしまうのがわかります。対して右側はまったくエラーを起こさず大丈夫。HoloLensなどのMR・ARソリューションには必須の資材なのですよ。
床置きキャリブレーションボードの無反射処理
続きまして、床に置くタイプのターゲットマーカーの無反射処理依頼です。このターゲットマーカーはカメラユニットの検査用とのこと。マーカーの写りを見て、取り付けたカメラユニットのズレなどを認識する、カメラキャリブレーションボードというやつですね。
上記の例と同様に、照明の反射によりはっきり白飛びが出てしまいます。
本依頼のキモは、床に設置するターゲットマーカーということで、踏まれながらの使用となること。「反射しない黒」と、「踏んでも大丈夫」という耐摩耗性の両立は結構難問なんです。
「軟質素材で取り扱いカンタン、触っても大丈夫」が売りのファインシャットですが、今までもっぱら光学機器用途の採用でしたので、踏むということは考えていませんでした。早速実験です。今回は「ファインシャットSP0.4」で検証します。
踏むべし!
踏むべし!!
とにかく踏むべし!!!
マッハ踏み踏みを開始して2000歩。いい運動になりました。
結果はと言いますとキズや破れは見当たらず。靴の汚れはついておりましたが、それもコロコロによる清掃でカンタンにお掃除できました。
光沢も出ず、光吸収性能に変化無し。Good!
あとは二次元コードの例と同様、レーザーで模様をカットして貼り付け、無事無反射仕様にして解決しました。
トリックアートの穴の表現など、踏まれることへの耐久性と黒さの両立を求める用途は少なからずあるのではないでしょうか?
印刷、塗装で達成できない無反射の黒。パネルのテカリや白飛びを解決できない方。ぜひファインシャットによる無反射処理をご検討下さい。
シート選定から設計、カット、貼り付けまでワンストップで対応。お見積り依頼はメールもしくはお問い合わせフォームまでどうぞ!
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迫田貫路 (水曜日, 20 5月 2020 11:46)
航空自衛隊の戦闘機や海自の潜水艦などに貼り付けると、敵のレダーやソナーなどに有効では。防衛省に持って行っては