近赤外域の反射とは? 赤外線カメラの不思議な世界

デジタルカメラと近赤外線

こんにちは、暗素研の新製品担当、鉄平です。

 

弊社の内面反射防止素材、「ファインシャット」シリーズの特徴として、「近赤外域も吸収する」という特徴を挙げています。

 

そもそも近赤外とは何でしょうか?
人間は波長域380~750nmの範囲の電磁波を視覚で捉えることができます。短波長380nm側を青、長波長750nm側を赤色として認識するのですが、赤色750nmを超える波長域を赤外線と呼びます。

 

"画像はWikipedia「 可視光線」より"

 

赤外線も可視光域に近い方から、近赤外(750~2500nm)、中赤外(2500~4000nm)、遠赤外(4000nm~)とあるのですが、今回は近赤外についてのお話です。

 

 

先ほどお話したとおり、赤外線は目では見えません。しかし、デジタルカメラのセンサーとなると話が少し変わってきます。デジタルカメラのセンサーは人間の目より捉えられる波長範囲が広く、近赤外線を捉えてしまうのです。

 

そのため、多くの機種ではセンサー前に赤外線カットフィルターを取り付け、近赤外域を減衰させて人の目に近づける工夫がされています。

メーカーによって、どの波長域をどの程度カットするかは設計思想によって異なり、近赤外が写りやすいカメラも存在します(例えば、富士フイルムのX-Trans CMOSセンサーは写りやすいようです)。

 

弊社には赤外カットフィルターを外し、可視光域をカットするフィルター(IR76)を付けたカメラがあります。今回はこれを使用して、デジタルカメラの近赤外の感受性と光の反射を見てみましょう。

 

可視光と近赤外の見え方の違い

春の訪れを感じさせる日差しの中、突然登場した男性・・・。私である。

Kawasakiの帽子をかぶり、しまむらの黒いフリースを羽織っています。すべて私物のおしゃれ上級者である。

 

冗談はさておき、これは通常のデジカメ画像で、富士フイルムのX-H1で撮影したものです。左手にはファインシャット極を長方形に切ったものを持っていますが、背景の黒いフリースと同化してよく見えません。

 

次に、同時に撮影した赤外カメラの画像をご覧ください!ドン!

ファインシャット 赤外写真

なんということでしょう。可視光域では光を吸収していたフリースと帽子は、近赤外線を盛大に反射し、真っ白に写ってしまいました。背後に植えてある植物も白く写り、先程の写真とは全く異なります。

 

そして今は手に持っているファインシャット極がはっきりと見えます。近赤外線もバッチリ吸収する特性により、変わらぬ黒さを見せつけております。

ファインシャット 可視光、近赤外の比較画像

先ほどのカラー写真をモノクロにしてみました。並べてみると違いは鮮明です。今回着用したフリースはポリエステル100%でした。このように、化繊の黒は可視光域では高い光吸収性能を持っていても、近赤外域を反射してしまうものが多いのです。一方、弊社のポリウレタンスポンジシート「ファインシャット」シリーズは、原材料にカーボンが練り込まれているため、近赤外線の反射を抑える素材なのです。

そんなファインシャットシリーズの製品ご紹介はこちらからどうぞ!!

>> 近赤外全反射率 1.2 ~ 1.8%  ファインシャットSP

>> 近赤外全反射率 0.7 ~ 1.1%  ファインシャット極

さいごに

以上、今回のブログでは近赤外についてのお話をさせて頂きました。

 

例えば、食品の非破壊検査、可視光では見えない製品の瑕疵発見、暗視カメラの機能を活用した自動運転のセンシングなど、近赤外線の光学的活用は近年非常に注目されている分野です。

 

しかし、近赤外域まで対応する反射防止素材は、市場にほとんどありません。弊社ファインシャットシリーズは非常に効果的かつ扱いやすい素材ですので、ぜひご活用ください。

 

最後に会社の近くにある神社の写真も上げておきます。どちらが赤外写真でしょうか?皆さんお分かりですね。

 

では、次回のブログでお会いしましょう。

 

追記 反射防止素材間の比較

ありがたいことに、本記事はたくさんの方に読んで頂いております。

読者様のご要望にお答えしまして、○まむらのフリースとの比較ではなく、弊社で取り扱っている反射防止素材との可視光、近赤外比較画像も公開させて頂きます。

 

サンプルは左から

・他社黒色反射防止コート付きPETフィルム(光学機器用の一般的な反射防止塗装処理としてお考え下さい)

・無反射植毛布

・ファインシャット極 です。

 

上が可視光、下が760nmから感度を持つ近赤外カメラの画像となります。

 

弊社の無反射植毛布は光学用途で光吸収性能重視。可視光域の全反射率はほとんどの波長で0.5%以下と優れておりますが、近赤外に近い700nm近傍から突然反射率が急上昇。暗室作成用途として定評のある素材ですが、近赤外においては全く効果が無いのでご注意下さいませ。


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コメント: 2
  • #2

    むらさき (土曜日, 08 10月 2022 08:44)

    楽しく解りやすく役立つ記事でした^^
    月面観察用にIR850フィルターを購入したところでしたので、
    鉄平さんから教わった知見を活かします♩
    有難うございました!

  • #1

    山元みどり (金曜日, 24 9月 2021 13:49)

    可視光と近赤外線の違い写真で判別出来ました。くっきりと物が見える事に
    利用されるのはメリットですが、小屋のような隙間の多い家屋では部屋を暗くしても外部からの少しの明かりで赤外線を当てると丸見え状態になる可能性があるな。とこのような知識のなかった自分にも解った気がします。分かりやすい説明有難うございます。